2016年8月14日日曜日

医療分野の知識が怪しい日経ビジネス庄子育子編集委員

日経ビジネスの庄子育子編集委員が8月8・15日号に「ニュースを突く~薬という“お土産”を欲しがる患者たち」という記事を書いている。この中に出てくる「しかも医師は薬を処方すればするほど、もうかる仕組みにとなっている」との説明が引っかかった。あれこれ調べてみると、やはり記事に問題ありと思えたので、日経BP社に問い合わせをしてみた。その内容は以下の通り。
福岡タワーなど(福岡市早良区) ※写真と本文は無関係です

【日経BP社への問い合わせ】

8月8・15日号の「ニュースを突く~薬という“お土産”を欲しがる患者たち」という記事についてお尋ねします。記事で庄子様は「しかも医師は薬を処方すればするほど、もうかる仕組みにとなっている」と断定しています。しかし、処方料・処方箋料は7種類以上の多剤投与になると6種類以下より診療報酬点数が低くなる仕組みになっています。患者が欲しがるからといってどんどん処方すると、病院の収入が減る場合もあるのです。処方箋は出さないより出した方が病院の収入にプラスにはなりますが「処方すればするほどもうかる仕組み」とは思えません。

記事には「医師は薬を処方すればするほど、もうかる仕組みとなっている」と書いてあるので、病院ではなく医師の収入について言及している可能性も考慮しました。薬を出す量や金額に応じて医師の収入が増える病院が絶対に存在しないとは言いません。ただ、常識的には考えにくい話です。

記事中の説明は誤りと考えてよいのでしょうか。正しいとすれば、その根拠も併せて教えてください。

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問い合わせをしたのが7日なので、日経ビジネス編集部ではいつものようにミスの指摘を握りつぶしたのだろう。ただ、庄子編集委員は「『日経ヘルスケア』など医療系雑誌の記者を経て現職。医療局編集委員も兼務」となっているので、この分野の専門知識は十分にあるはずだ。なのに、こんな初歩的な説明で問題を起こすだろうかとの疑問は残る。

この記事には他にも問題を感じた記述があった。

【日経ビジネスの記事】

ジェネリック薬が出ても、長く使われてきた先発薬からの切り替えが進むのに時間がかかる。新薬が登場すれば、医師も当たり前のようにそれを処方する。そして使い始めたら半永久的になる。そんな日本独特の薬の使用がまかり通ってしまっているのが実態なのだ。

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新薬が登場すれば、医師も当たり前のようにそれを処方する。そして使い始めたら半永久的になる」は言い過ぎだろう。個人的な話ではあるが、先発薬を使っていると自治体から「あなたの使っている医薬品にはジェネリック薬品があります。ジェネリックを使うと、これだけ自己負担が減りますよ」という通知が来たので、それに従ってジェネリックへ切り替えた経験がある。

これは自分の住んでいる自治体だけではないようで、「質を下げずに医療費を削減した広島県呉市」(2016年6月27日付 日経ビジネスオンライン)という記事で河野紀子記者は以下のように書いている。

【日経ビジネスオンラインの記事】

呉市がまず力を入れたのが、ジェネリック医薬品の積極的な普及だ。がんや精神疾患など重篤な疾患以外について、ジェネリック薬に変えたら本人が支払う金額が200円以上少なくなる場合に、差額を通知するようにした。今でこそ、薬局などでこうした差額を教えてくれるのは珍しくなくなっているが、呉市では2008年度から始めていた。これまでに85%以上の患者が差額通知後にジェネリック薬を使うようになり、10億5000万円以上の削減効果が出ているという。

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こうした差額通知制度は多くの自治体にあるようだ。新薬は「使い始めたら半永久的になる」かどうか、庄子編集委員にはじっくりと考えてほしい。せっかく同じ日経ビジネスの編集部に属しているのだから河野記者に意見を求めてみるのも手だ。


※庄子編集委員の記事の評価はD(問題あり)。庄子編集委員への書き手としての評価も暫定でDとする。日経BP社への問い合わせについては「回答なし」がほぼ確定しており、説明が間違っている可能性が極めて高い。ただ、自分がこの分野に詳しくないこともあり、最終的な結論は留保したい。よって庄子編集委員への評価もF(根本的な欠陥あり)とせず、暫定でのDに留めた。

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